
見える化とは
見える化(Visibility/可視化)を行ったのに、何も効果を得られなかったという事業や会社の話をよく聞きます。
データベースに保存されているデータを報告書の如くグラフにして見せただけの「見える化」、製造現場の進捗を掲示しただけの見える化、どれも施策としては間違っていませんが見えたものを活用しなければ意味はありません。
トヨタ生産方式の「見える化」の目的と効果について正しい知識を得れば「見える化」による効果は計り知れません。それは、人の行動を促し、その行動によって何かを変えて良くすることです。

何を見るのか
(1)ムダ
製造でやるべきことを一言で表現すると「ムダ排」と私は言います。
徹底的にムダを無くせば、価値を付ける部分だけが残ります。製造の機能は価値を付加することですからその割合が高ければ高いほど生産性が高いといえます。では、ムダとは具体的に何を指すのか、製造現場にどのようなムダがあるのか? 「7つの無駄」が見えているでしょうか。現場の作業者はムダを理解していれば目の前のムダはいつも見えています。それだけでは見える化できているとは言えませんし、改善は進みません。作業時間・加工時間その他の時間の中で何パーセントが付加価値を付けている時間でそれ以外にどのくらいあるのか、まずはそれを「見える化」するのです。
(2)進捗
計画や予定に対してどこまで進んでいるのか、どの程度達成されているのか、問題は発生していないのかなどを「見える化」する必要があります。よく製造現場に掲示してある進捗掲示板が最もわかりやすい例でしょう。目的に対する自分たちの活動の今の状態を見ることができなければなりません。
(3)異常
異常とは、正常ではない状態のことを指します。手を打たないと問題が発生する場合や、目標未達となることが明確である状態です。異常を「見える化」するためには、まず、正常を定義します。その状態から外れた状態を異常として「見える化」するのです。
(4)ノウハウ
1人が見つけた改善ノウハウは、何もしないと限られた範囲でしか知られない限定された効果しか生まれません。
多くで共有できれば、それだけ効果は高くなります。そのために個人や職場が持っているノウハウを「見える化」して広い範囲に開示することが重要です。

見える化は何のために行うのか?
ずばりアクション(行動)です。しかもできるだけ早いアクションによってロスをミニマムにすることが最も重要な目的です。
具体的にどのようなアクションかというと、例えば進捗が遅れている場合はその日のうちに挽回するためのアクションをすぐにとることや、設備に異常が見受けられた場合は、早めにメンテナンスをしたり消耗品を交換したりするアクション。
ムダが「見える化」された場合、そのムダを無くすことをすぐにでも考えて対策するアクションや、良いアイデアやノウハウはすぐに展開できそうなところに同じノウハウを採用することもアクションです。これらは時間が経てばたつほど出るはずの効果を失うことになります。そのためにはアクションするのは管理監督者の指示ではなく、レベルによっては現場での判断でアクションを行うことも重要です。目的やムダなどの内容が明確に定義され意思統一された現場はこのような「管理レス」で正しいアクションと成果が出せるのです。
製造IoTで実現する本当の「見える化」
設備や作業者からたくさんの情報がリアルタイムに取得できる今の時代、そのデータがまさに「見える化」可能であり「見える化」すべき情報ではないでしょうか。目的は同じであり、今までできなかったレベルの「見える化」を可能にするのが製造IoTだとも言えます。リアルタイムに設備や作業者の稼働情報、生産個数、進捗、環境、異常情報など様々な情報が取得でき、素早いアクションに繋がるデータ活用の仕組みができると、従来は翌月、翌日に結果を見て分析して、対策やアクションしていたことが、まさに当日の状態に応じて対策したり、予知・予防のアクションをしたりすることも可能です。デジタル化によるスマートファクトリーと言い換えることもできるでしょう。あくまでも下記1、2はセットで効果が出るのが、製造IoTです。
- エッジコンピューティング
設備や作業者から情報を取得すること。対象や方法は多岐にわたっています。例えば設備から情報を取得する場合は、設備を制御しているPLCを直接ネットに接続して情報を取得する方法や、センサーで必要な情報を取得する方法 - データ活用(BI)
取得したデータをアクションに繋がる形で表現すること、例えば閾値を超えた場合にアラートをだしたり、メール等でお知らせしたりすることもできる。さらにアクションを自動化したり、アクションが必要になる前段階の状態を予知したりすることで、さらなる生産性の向上や品質の改善、コストの削減を可能にする。
まとめ
従来から製造現場の管理で有効だといわれている「見える化」について述べてきました。基本的な考え方は従来と変わらず、その目的をより早く達成するために、新しい技術としての製造IoT、道具として手段としての製造IoTを実現することで今までできなかったレベルの見える化とその効果を得られることでしょう。
