
5Sができている製造現場は安全が担保されています。
その理由ついて私の経験を元に説明します。
<関連サイト>
i-Common ビジネスコラム「製造業における5S」
https://i-common.jp/column/corporation/5s/
- 5S おさらい
- 製造現場の安全について
- とある海外の工場にて
- 労働災害が起こる原因
- 長続きしない「場当たり的な対策」
- 安全は意識・知識・景色
- まとめ
5Sのおさらい
5Sとは以下の5つの言葉のアルファベットの頭文字をとったものです。
意味も簡単につけました。
整理(Seiri) : 必要なものと不要なものを区別すること
整頓(Seiton) : 必要なものを使いやすく配置すること
清掃(Seisou) : 汚れのない状態にすること
清潔(Seiketsu) : 汚れの無い状態を維持すること
躾(Shitsuke) : 上記を習慣づけること
言葉だけとれば、現場・職場に必要なものだけ配置して綺麗な状態を保つことなので、簡単なように思えますが、製造
製造現場の安全について
安全に対する取り組みは製造しているものや、使用する材料等によってそのレベルは異なります。一般的に大きな重量物を扱っている職場や、プレスや切削、溶接など設備の取り扱いに注意が必要な現場、薬品など有毒なガスや液体を扱う製造現場は命の危険にさらされる可能性があるため、最も厳しい対策を講じているでしょう。一度重篤災害があると被災した人の命や人生に関わります。
従って、どこの工場に行っても「安全第一」を掲げ、作業着の着用や、帽子・ヘルメット、軍手、メガネや耳栓などを装着することを義務付けている製造現場もたくさんあります。
海外の工場にて
海外の工場を見学した時に、「この工場は労働災害が多くないですか?
」と聞いたことがあります。予想通り「多いです。なんでわかるのですか?」という回答でした。工場見学をして気になったことは、通路や置き場所と思えない場所に部品や材料、または不明なものが置かれていたり、通路が曲がりくねっていて(これは建屋の設計上仕方ない部分もあります)、注意しないと通路から脱してしまいそうであること。製造しているワークの動線が分かりにくいなど、多くの非効率を生む要因があったたからです。また、海外なので作業者の入れ替わりが激しいため、採用されたばかりの人が、最初は注意するかもしれませんが少し慣れたころにつまずいたりぶつけたりするのではと感じたからです。
作業者は品質確保や納期管理のために人間らしく臨機応変に動くことがあります。品質や納期などを優先する場合に安全の優先度が落ちてしまうケースが多々あることを認識しなければなりません。
労働災害がおこる原因
労働災害が発生する原因は様々ですが、作業者の不注意やムリな作業による怪我が大井と聞きます。厚生労働省の統計では平成28年度の製造業の死傷者の内訳は以下の通りです。
(1)はさまれ・巻き込まれ 7160件 25.7%
(2)転倒 5360件 19.2%
(3)転落 2988件 10.7%
(4)切れ・こすれ 2792件 10.0%
(5)無理な動作 2444件 8.8%
上記4つの要因だけで74.4%になります。
長続きしない「場当たり的な対策」
災害がおこると、その直因に対して対策を講じるケースが多いです。例えば部品や製品を運ぶ台車に足を踏まれて打撲したという災害の場合、その台車に対策を施した事例を聞いたことがあります。また、設備に手を入れて挟まれたという災害も聞きますが、設備にエリアセンサーを付け、手を入れたら設備が止まる仕組みにする等の対策が一般的です。もちろん必要な対策であり、有効だと思いますが、そういう職場ではそもそもどのような教育をしているのか、疑問が湧いてきます。普段から無理な作業や実施してはいけない作業が徹底して禁止されているのか。設備に手を入れたのはなぜなのかなど分析すると、生産性や納期が優先となり、根本的な対策や教育が徹底されていないことが問題ではないでしょうか。直因に対する対策に加えて、真因を追求してそこに対策を講じることが大事です。
安全は意識・知識・景色
安全はそれを維持する仕組みや仕掛けも非常に重要です。ただしどんな仕組み・仕掛けも安全意識の低いところでは無力にもなり得ます。
●意識
製造現場のマインドは非常に重要です。生産性、品質、納期と「安全第一」をどれだけシンプルに繋げて意識させるか、まだトレードオフになる場合何を優先するかは明確に指示をする必要があります。急いでいる時、疲れている時などに災害が発生します。そういう時にこそ安全を意識できる教育を行うことが大事です。
●知識
危険な個所や行為についての知識をしっかりと得ることが重要です。どういうことをしたら挟まれるのか、挟まれたらどうなるのか、そういう時にぶつかるのか、ぶつかったらどうなるのかなど、製造現場で働く人が知識を持ってお互い注意し合うことも行いましょう。
●景色
見た目に綺麗で広くて垂直平行に整然としている製造現場は災害は起こりにくいでしょう。そのような意味で景色が重要であると考えます。散らかっていたり汚れていたり、ムダがある職場はそれだけ災害発生の確率は上がります。
まとめ
本当の意味での5Sができていれば、以下の点で製造現場に安全が確保されているといえます。
(1)ムリな作業がない
災害の原因は「ムリ」な作業をしていることが多いためムリな作業をしないことが5Sで徹底されていれば、労働災害は発生しません。ほとんどのケースがイレギュラーな作業を人間が行うことで発生するのが災害です。普段から定位置で定義された作業をムリなく行うことを目指すことが重要です。
(2)危険の要因(ムダ)がない
通路につまずく原因のものがあったり、垂直平行ではない場合など、作業者はいつもと違うことに注意をしなければなりません。その注意しなければならないこと自体がムダなのです。あらかじめ通路や作業場所が区分管理され、余計なこと(ムダなこと)を考えずとも効率よく作業ができればそこに労働災害の発生する余地はありません。
従って各々の製造現場にあった5Sを追求すれば安全な職場になることは間違いないのです。
