IoTを始めるときスモールスタートが鉄則と言われています。
しかしそれは大きな落とし穴にはまる可能性もあります。
そんな考察をしてみました。
工場での製造IoTを題材にしています。

目次
- IoTはまずやってみよう
- 目的を決めて安価にスモールスタート
- ゴールはどこなのか
- 長期的視点
- 全体最適
- お勧めのプラン
IoTはまずやってみよう
IoTはやるべきことが大きく2段階あります。
(1)データの取得
(2)データ活用
詳細は別のところで詳しく述べていますのでここでは省きますが、データを活用して初めて経営貢献に繋がります。しかしそのデータが無い場合は取るところから始めなければなりません。従ってまずは「データを取ってみよう」なのです。
目的を決めて安価にスモールスタート
目的も無くやみくもにデータを取っても活用し得るデータなのかどうかわかりません。取得したデータは活用できなければムダなコストにしかまりません。従って、最初は明確な目標を一つでもせってすることが肝要です。例えば設備の稼働情報を取って稼働率を見える化しよう、報告や分析の自動化を目指そう、という目標で良いと思います。または品質のデータを取って自動で保管する(トレーサビリティ)や数量を自動カウントして進捗掲示を自動化するなど最初の目的は比較的決めやすいのではないかと思います。
ゴールはどこなのか?
最初の目的が決まったらその目的に応じたお手軽な手段で早く、安く実現を目指しましょう。それがスモールスタートです。
一方、それをしながら、次以降のステップと将来像を描くことが重要です。それは中長期的な投資やシステムの管理コストなどを最適化するためです。
おそらく、スモールスタートで決めた目的を達成したらそれで終わりというわけではないでしょう。実際に後のことを考えずに実施した企業がそこで足踏み(次のステップに進めない)するケースが多いと聞きます。
漠然とでもよいのでゴールの姿を描くことが重要です。
長期的な視点
設備の稼働状況を取得して停止要因を分析して稼働率を上げよう、生産性を改善しようというのを最初の目的としたと仮定します。それで終わりでしょうか。データがリアルタイムに取れてそんな良いことがあるなら、生産性改善だけではなく、品質もやろう、実際原価を把握しよう、在庫管理精度を上げよう、同業他社は予知保全もしてるよ・・・と多目的になるはずです。
そのような多目的を達成するゴールが描けていれば後はシステム構築の組立です。
全体最適
多目的になった場合、それぞれの目的に応じてそれぞれに最適と思われる手段を持ち寄ることは、全体最適につながらないことがほとんどです。
特に工場の中に様々な設備メーカーの設備が導入されている場合、設備メーカーごとの対応で別々のシステムになってしまうと、データ活用において連携して相関関係などの分析が難しくなってしまい活用による効果の限界がすぐにやってきます。
今はOPCという標準規格もあるのでできるだけ多くのデータを共通規格で取得することをお勧めします。会社単位にIoTのプラットフォームを構築して、設備であればメーカーに関係なくPLCから共通の仕組みで接続し、PLCが古い等の理由でインターネットに接続できない場合、外部のセンサーから取得する方法も構築しておくことで、汎用的なIoTのシステムが構築可能です。そこまでできれば、人の作業をカメラやビーコンでデータ取得したり、フォークリフトや台車などの搬送系のデータも取得できる方法も色々と考えられます。
その会社のIoTの型ができるでしょう。
お金と時間ががかかるように思えますが、中長期的に考えると安価に済む方法なのです。大きな効果を得るには汎用システムに投資をすべきと考えます。あとは材料費と多少の開発費で済むはず。
まとめ
スモールスタートはIoTの初期段階において、リアルタイムに情報を取得できたら何かできるかの検証程度で活用しましょう。
それと平行して、将来のゴールとそれに向かうための全体最適のシステムを設計しながら進めましょう。スモールスタートは部分最適な閉じたシステムであることも多く、それを繰り返しても全体最適にはなりません。
<傾向としては以下になります>
スモールスタート = 専用システム = 部分最適
IoTの理想 = 汎用システム 全体最適